羽生善治は史上最も優れた棋士の一人だ。
彼は真の「盤上の王」である。
ここではプロ棋士としての経験についてのインタビューに語ってくれた。
将棋をすることを初めて学んだのはいつでしょうか?
小学校1年生のときだったね。最初、ほとんどのゲームで負けたけど、一ヶ月かそこらで、勝ち始めたんだ。二年生のとき、子供のトーナメントで参加した八王子にある将棋道場に行ったんだ。
決勝に行けるほど上手くなかったけどゲームは楽しめたよ。僕はより良い棋士になりたかったし、練習のために道場に通い始めたんだ。
将棋のどこらへんが好きですか?
子供の頃、多くの異なる駒で遊ぶのが面白いと気付いたんだ。それぞれの駒は異なる動きを持つ。
それに、ゲームの結果も明快だ。勝つか負けるかだからね。
ゲーム全体は原因と結果のプロセスだし、勝ち負けは自分自身の責任だ。
もちろん、負けて良い気分はしないけど、凄く奥深いから僕は将棋が好きなんだ。
プロのキャリアの中で、羽生さんはゲームで70%以上の勝率を誇ります。(駒を)動かすとき、常に自信はありますか?
たまに、どれを動かすのか決めるのが非常に難しいときがある。深く考える時間が十分になく、駒に手を置くまで次の動きをどうするかすら分からない。これが運が向いてきたときだ。*at times:たまに
自分の手が良い選択をすることを信じるんだ。
じゃあ、あなたの問いに答えると、駒を動かすときいつも自信があるわけじゃないよ。
プロ棋士は何百もの先の動きを考える事が出来ると聞きました。合っていますか?
ああ、それについてはっきり分からないね。棋士のグループでは、10手先にどうなっているか予測できるかどうか討論していたんだ。
みんな出来ないことに賛同してくれたよ。将棋をするとき、(駒を)動かすごとに決定を下す必要がある。
前に述べたように、完全に自信を持てる場合ばかりじゃない。むしろ、これは多分正しい動きなんだと考えている。
対戦相手は予想もしない動きを返してくるかもしれないし、ゲームが終わるまでそのプロセスが続くんだ。
最も重要なのは決断力だね。
決断をするときに、自分の直感に頼ることはありますか?
うん、僕は直感というものを信じている。経験上、直感に基づいた動きの約70%は正しいということがわかった。*turn out~ : ということがわかる
多くの動きを予想できることは重要だが、より重要なのは注意を2,3の良い動きに集中できることだ。
直感が必要になるのはここだ。しかし覚えといてほしいのは、直感は多くの経験を通してのみ手に入るということ。
過去の戦略を研究することに多くの時間を費やしますか?
あらゆる戦略を学ぶことは重要だ。しかし戦略を知ることと、対戦に勝てることはまったく異なる。A is one thing, B is another: AとBは別問題である
必要なことは、その戦略の意味を本当に理解することによって、知識を知恵に変えることだ。
羽生さんはたまに意外な手で相手を驚かせることがあります。それは対戦に勝つのに効果的ですか?
必ずしもそうでない。もしなにか新しいことを試すと、50%以上の確率で失敗するだろう。
もし安全にやるならば、しばらくは高い勝率を維持できるかもしれないが、今から10年先も勝ち続けていることはできない。
そしてやがて、創造性を失う結果になる。なにか独創的なことを試すほうがより楽しい。
羽生さんは偉大な才能を持っていると皆知っています。自分の才能をどのように定義しますか。
うーん、もし僕に才能があるとすれば、それは 忍耐だろうね。駒の進め方を予期できること、あるいは、ひらめきを持つことは重要だが、将棋を上達させるために努力することが、いかなるときでも持ちうる最大の才能だ。
あなたは将棋に愛しているように見えます。将棋の対戦の中でいちばん魅力的なところはなんですか。
将棋の歴史において、何十万回と対戦が行われてきた、私たちは将棋の世界のほんの一部分しか知らない。
将棋をするたびに私は見知らぬ領域へ旅立っているような気がする。だから、それが将棋の魅力的なところだ。
もしあなたがプロの棋士でないなら、なにをしているだろうと考えたことはありますか。
私はいままで、本当にそんなことは思ったこともありません。
もし、ほかの仕事に就くよう強いられるならば、たぶん一日だけタクシーを運転してみたいかもしれません。
毎日どこへ行くかわからないから、それは興味深い仕事だと思う。
モットーはありますか。
幸運は勇者に味方する。