科学と技術は我々に快適な生活を提供してきた。
しかし時として我々の技術は自然界に傷をつける。
科学作家のジャニン・ベニュスは我々の技術を自然に適応させる手法「バイオミミックリー」を提唱している。

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地球上で人類よりも多くを成し遂げてきた生き物はいない。飛行機、電車、コンピュータ、携帯電話、薬、殺虫剤のような有用な道具に加え学校、大学、病院、銀行などの施設を我々は数多く作り上げてきた。それなしでは、現代世界は存在しないだろう。

これらの物は広範囲な移動、瞬時な情報収集、独習、病気の治療を我々に可能とさせた。
しかし、我々が作り上げてきたものは有害にもなりうるのだ。
殺虫剤は虫を駆除できるが、土壌を汚染しうる。我々は車を必要としているが、CO2はは地球温暖化の主要因のひとつかもしれない。

今こそ我々はこの問題を問わなければならない。
自然との調和して生きたら、快適な生活様式を維持できるだろうか?
言い換えれば、どうすれば我々が持続可能な暮らしができるだろうか?

NEW WORDS and PHRASES
conform:適応する accomplish:達成する pesticide:殺虫剤 institution:施設 gather:集める education:教育 harmful:有害な poison:毒する soil:土壌 global warming:地球温暖化 harmony:調和 sustainable:持続可能
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ジャニン・ベニュスはその問いは自然に寄り添うことで発想を見つけ出せるのではないか、と提案する。*look to~for… :~に…を頼る 
「バイオミミックリー」は「生命」を意味するbioと、模倣を意味するmimesisから来ている。
我々は自然を模倣することによって、自然に優しい生き方を模索しなければならない、と彼女は言う。
ベニュスの心の中にある自然とは我々の師であり模範である。

自然について学ぶのではなく、自然から学ぼうとすれば不思議な感情を感じるかもしれない、とベニュスは我々に思い出させる。*herは自然のこと *once~:ひとたび~すれば *remind~that…: ~に…ということを思い出させる
実際、我々が夢でしかありえないような様々な動物や植物が存在する。
現代の最速の航空機よりもさらに素早く動くトンボはどうか。
3グラム以下の燃料で何百キロも飛べるハチドリはどうか
自身の体重の何倍もの重さを運べるアリはどうか。
これらは自然に害を与えることなく、このようなことをしているのだ。

NEW WORDS and PHRASES
imitation:模倣 imitate:まねする supporting:補助の threaten:脅かす dragonfly:トンボ sort:種類 hummingbird:ハチドリ fuel:燃料 ant:蟻 weight:重さ after all:結局
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ベニュスは、解決策がないからではなく、我々が適切な指針に目を向けないため、環境問題に直面していると考えている。
事実、特にデザインの分野では、自然にひらめきを頼ることで多くの問題が解決できる。

日本のエンジニアは、ある問題を抱えていた。
新幹線はトンネルに入るときに、轟音が発生した。
この問題を解決するために、エンジニアはカワセミに目を向けた。カワセミは水滴が跳ね返ることなく水に飛び込む鳥だ。
彼らはその解決策を見つけた。彼らはカワセミのくちばしと同じ形に電車の先端の部分をデザインしたのだ。

ジンバブエのハラレにあるイーストゲート・センターは、環境に優しい空調システムで有名である。
この建物を設計した建築家は、シロアリの塚から着想を得た。
シロアリは塚の小さな穴を開閉することによって生活空間を快適な温度に保っている。
建築家はイーストゲートセンターに同様のシステムを用い、電力を抑えた。

サメは地球上でもっとも古い生物の一つである。彼らは環境に完全に適応している。
例えば、皮膚の模様はバクテリアから自身を守っている。
科学者は学校や病院のような場所で細菌を抑制するために、どのように同様の模様を壁に使えるかを見つけた。

NEW WORDS and PHRASES
solution:解決策 engineer:技術者 kingfisher:カワセミ dive:飛び込む splash:しぶき beak:クチバシ air conditioning:空調 inspire:刺激をうける termite:シロアリ mound:土手 temperature:温度 electricity:電気 shark:サメ suit:合う bacteria:バクテリア
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ベニュスはバイオミミックリーが、私たちがもっと自然に目を向ける手助けすることで、我々の生活スタイルを変化させると考えている。

我々は自然を永遠に利用し続けることはできないし、自分たちの出すゴミを自分たちの環境に捨て続けることもできない。

非常に長きにわたり、我々は技術革新が自分たちにとって有益かどうかで、あるいは金になるかどうかで判断してきた。

ベニュスは、我々が地球全体にとって有益なことをまず第一に置き、そしてそれが私たち人類にも有益であろうと考えることを提案している。

我々はこう問わねばならないだろう。

それは適合するだろうか?自然界にこの模範はあるだろうか?それは地球と未来の世代にどんな犠牲や損失をもたらすことになるだろうか?

バイオミミッククリーは我々の未来にとって重要な役割を担う強力な道具だ。

人類が始まって間もない頃、我々人類は広大な世界にわずかな数しかいなかった。

いまや人口は急速に増加し、我々はは環境に悪い影響を与えはじめている。

我々は「どうすれば自分たちの故郷の惑星を破壊することなく住むことができるか」という質問に対するやっと答えを探しだした。

ベニュスは、バイオミミックリーは新しい自然の見方であるだけでなく、地球という惑星で私たちが生存し続けられるかどうかのカギでもあると考えている。

我々は地球で生きていくことを学ばなければならない。

地球は我らの故郷だが、我々だけのものではないのだ。

NEW WORDS and PHRASES
thus:よって advantage:優位 dump:ぶつかる innovation:革新 cost:費用 generation:世代
population:人口 rapidly:急速に