ジェーン・グドールは有名なチンパンジーの研究者だ。
ケンジはジェーンに自身の人生と活動についてインタビューをする。

ケンジ:グドール博士、インタビューのための時間を割いていただき、誠にありがとうございます。
博士は長い間アフリカでチンパンジーの研究に費やしていますね。
いつ最初にアフリカへ行く決心をされたのしょうか?

ジェーン:それはドリトル先生とターザンの本を読んだ後です。
11 歳のとき私はどうにかしてアフリカに行き動物と共に暮らし、動物の研究をし、動物に関する本を書こうと思ったんです。

ケンジ:いつか動物とともに働きたいと思っている若者がきっと多くいると思います。彼らはどのような準備をしたらいいでしょうか。

ジェーン:動物を理解するためには、できることは数多くります。動物をよく見て、行動を観察することが非常に重要。
メモを取ったり質問をしたりすることもまた重要ですね。強く決意しさえすれば、道は開けます。

NEW WORDS and PHRASES
root:根っこ shoot:萌芽 somehow:どういうわけか、何とかして someday:いつか observe:観察する behavior:行動、振る舞い determined:決心する
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ケンジ:博士は野生のチンパンジーを観察しながら野外調査を数多く行ってきました。チンパンジーは何らかの形で人間と類似しているのでしょうか?

ジェーン:チンパンジーと人間には多くの共通点があります。ヒトとチンパンジーのDNAは、ほんの1%強ほどしか違わないということが今日ではわかっていた。チンパンジーの脳は私たちの脳と酷似しているし、行動のうちの多くの部分が私たちの行動と類似しています。私たちと同じように、チンパンジーも子供のころに学ばなければならないことが数多くあります。チンパンジーの家族のメンバーはとても親密で、よく互いを助け合っています。悲哀、幸せ、恐怖、憤怒を感じることもできるんです。

ケンジ:性格はどうでしょうか― つまり、チンパンジーは友好的なのでしょうか?残虐なのでしょうか?

ジェーン:普段はお互いに友好的だが、残虐になることもある。ちょうど人間と同じです。

ケンジ:本当ですか?

ジェーン:オスのチンパンジーは自分の縄張りを見回って、時には他の群れから来たチンパンジーを攻撃することもあるのです。でも、とても優しく愛情深いこともあるんです。かつて、メルと呼ばれるオスのチンパンジーが3歳くらいのとき、母親を亡くし1人で取り残されたことがありました。メルは死んでしまう、と誰もが思ったのです。ですけど驚くことに、スピンドルという名の12歳のオスのチンパンジーがメルの世話をしたのです。

ケンジ:どのようにでしょうか。

ジェーン:メルを背中に乗せたり、夜にはいっしょに寝たりしていました。メルが頼むと、スピンドルが自分の食べ物を分けているのを見たことが何度もあります。

NEW WORDS and PHRASES
fieldwork:野外調査 differ:異なる childhood:子供時代
character:性格、特質 cruel:残酷 male:オス patrol:見回る territory:領地 attack:攻撃する community:共同体 loving:愛情深い nest:巣 indeed:たしかに caring:思いやりがある
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ケンジ:さて、話題を環境問題に変えましょう。世界中を回って、自然保護について話をしてらっしゃいますね。これについてお話はありますでしょうか?

ジェーン:ええ、私たち人類は野生動物が生きる権利を持っていることを理解しなければなりません。野生の動物には野生の場所が必要です。
さらに、私たち自身のためにも絶滅させてはいけない生物種もいます。人間の病気を治す多くの薬が植物や昆虫から作られています。野生地域を破壊するとき、ガンやその他の病気の治療方法を、知らず知らずのうちに破壊しているのかもしれません。

ケンジ:なるほど。

ジェーン:自然の中にあるものは全てつながっているのです。植物と動物が全体の生命様式を作り上げています。もしそのパターンを壊してしまうと、あらゆることがうまくいかなくなってしまうということになりかねません。

ケンジ:それについてさらに詳しくお話いただけますか?

ジェーン:もちろん。ある時、イングランドでウサギが農家の穀物を荒らしていました。農家はウサギを病気にかからせて殺しました。すると、キツネは十分な食べ物がなくなって、農家の鶏を殺し始めました。農家は今度はキツネを殺しました。すると、ネズミの数が急に増えて、昔、ウサギが食い荒していたのとちょうど同じくらいたくさんの穀物を荒らしました。人類は環境を破壊し、それと共に私達自身も破壊する危険にさらされています。

NEW WORDS and PHRASES
environment:環境 conservation:保護、保守 comment:話 besides:加えて destroy:壊す drug:薬 disease:病気 insect:昆虫 cure:治療する pattern:パターン、様相
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ケンジ:では、私たちの将来を心配しているのですか?

ジェーン:ええ。とはいえ、若者たちに希望を持っていますよ。若者たちは、ひとたび環境問題を知れば、解決したくなると思うのです。だから、ルーツ&シューツを始めることにしたわけです。

ケンジ:なんですか、それは?

ジェーン:そうですね〜、1991年にタンザニアの高校生グループから始まりました。それがルーツ&シューツと呼ばれています。なぜなら、根は水に到達するために岩を突き破って進むことができるからです。そして、萌芽は小さいが日光に到達するために壁を突き破ることができるからです。岩と壁は、人類が地球に引き起こしている問題 (の比喩)です。

ケンジ:では、それは若者たちのクラブのような存在なのですか?

ジェーン:そのとおり。現在、世界中に仲間がいて、それぞれのグループは 3 つの計画を選ぶんです。人を支援する計画、動物を支援する計画、そして自然環境を支援する計画。
悲しんでいる人を笑わせたり、イヌのしっぽをふらせたり、渇いている植物に水をあげたりすれば、世界はもっとよい場所になります。ルーツ&シューツとはそういうものなんです。

ケンジ:では、最後にお話をお願いできますか?

ジェーン:人間とチンパンジーのもっとも重要な違いは、私たちは話すことができ、考えを共有することができるということなんです。あなたがたひとりひとりに果たすべき役割があり、変化を生むことができる。あなたはひとりの人間にすぎないが、あなたが行うことは世界に影響を与えるのです。そして人間には選択権があります。なにを買うべきか。なにを食べるべきか。なにを着るべきかの。
ひとりの人間が生み出す変化は小さいかもしれないけれど、もし1000人の、100 万人の、10 億人の人々みんながそうした変化を生み出すならば、それは大きな変化をもたらすことになるでしょう。
ケンジ:グッドール博士、お時間をいただいてお考えを共有していただきありがとうございました。